譲れない思い。~夏から秋~

2013年8月30日金曜日

日常

t f B! P L
こんにちは。地域医療連携室の佐藤です。

いよいよ8月最後のブログとなってしまいました。

天候や時間帯によっては肌寒くもあるここ数日、秋が今や遅しと主役になる
その時を待っているのでしょうか。

「そろそろ私の出番ですね。一年ゆっくり休みましたし、体調は万全です」

と、秋は清々しく澄んだ声で呟く。

「へ!? 誰が9月になったら秋だと決めたんだ? まだまだ十分に暑いじゃないか」

と、夏は猛暑の勢いそのままに応戦する。

「あまり無理をなさらない方がよいですよ。皆さんはもう、朝も夜も冷えるなと思って
いますから」

秋は季節そのままに涼しい顔をして言った。

「あのさ、天気予報をよく見てみなよ。最高気温、25度。わかる? 夏日だよ夏日。
夏の日なんだからまだ夏だろ」

真っ黒に日焼けした夏は、まだまだ余裕の表情だ。

「私は、無理に自分が主役になりたいなんて思いません」

「ふーん、ならいいだろ。今は夏、9月に入ってからも夏、まだしばらくは夏だ」

自信に満ち溢れた夏を見ながら、秋は冷静に返す。

「私はよいのですが、皆さんがどう思うかです。〇〇の秋、というのがたくさんありますしね」

「あ~、それおれ嫌なんだよな。スポーツだ食欲だ読書だ芸術だと、なんでも秋をつけれ
ばいいと思ってやがる」

「そんなこと言ったら夏はどうなるんですか! 何かにつけ夏だからって理由で開放的に
なって、暑いからって許されてしまうその雰囲気、私はそちらの方がよっぽど嫌です!」

秋は紅葉のごとく顔を真っ赤にしながら声を荒げた。

「お、おい、急に怒るなよ。だから秋は移り変わりが激しくて参るんだよな…」

サングラスを外し、夏はぽりぽりと頭をかいた。

「すいません。取り乱しました。 ただ私は四季にはそれぞれの役割があるのですから、
その時が来たら素直に次の季節に後を任せればよいと思うのです」

「まぁなぁ。でも、春夏秋冬の中で季節が変わることを惜しまれるのなんて夏くらいの
ものだぜ」

「そんなことありませんよ。他の季節が一番好きだという方も必ずいます。 それに、
ずっと夏だったら、その嬉しさもなくなるのではないですか?」

深呼吸を一つして落ち着きを取り戻した秋は、再び冷静に話しを進める。

「確かにそれはそうだな。もしもここが常夏だったら、おれの登場に喜ぶ人達も
いなくなる。というより、おれは年中無休ということになるな」

「そうですよ。だから、少しずつ私に後を託していただいて、来年登場する時
には少しだけ早くやってくれば、皆さんきっと喜ぶと思いますよ」

「うーん、そうか」

夏は目をつぶって唸っている。

「その手に持っている虫捕り網も、リュックの中に入っているビアジョッキも、明日
が終わったらきれいに洗ってから保管して、お休みに入ればいいのです」

秋は語りかけるように、ゆっくりと話した。

「いやしかし、夏日の間は夏だ。それは譲れない」

ぱっと目を開いた夏は、力強く言い放つ。

「……。わかりました。気温が25度以上ある時は夏、それでいいでしょう」

夏の信念に負けたとでもいうように、秋はふっと笑みを浮かべた。

「よし、こうなりゃどこまで夏日を続けられるか、記録を作ってやる」

「いやいやいや、そんなに張り切るのはいけません。先ほどお話ししたじゃ
ありませんか。自然でいいんです、あくまでも自然で」

両手を広げ、秋は夏をなだめるように言った。秋の額には汗が滲んでいる。

「わかったからそんなにムキになるな。おれだって、四季の一人として自分の
立場くらいわかってるつもりだ」

少しだけうつむいた後、夏は顔を上げて続けた。

「ただ、北海道の夏は特に短い。だから、少しでも長く主役でいたかっただけさ 」

夏が麦わら帽子で顔を覆う瞬間、目に光るものが溢れていたのを秋は
見逃さなかった。

「また来年、いい夏だったと言われるようにがんばってください」

秋は両手で夏の右手を優しく、そしてしっかりと握りしめた。

「おう。でも、夏日は夏だからな」

と、こんなことを想像しつつ、個人的には夏よがんばれと声援を送り
たくなっているお昼休みの佐藤でした。

以前、『行ったり、来たり。~春と冬の間で~』のタイトルにて同じような
やりとりを描いたところ、ご好評いただきましたので今回は夏と秋版を
お送りした次第です。

さて、8月の残りは今日と明日。

夏好きの皆様、 楽しみましょう。

それでは。



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